Lesson2−1社会的養護の歴史とその意義【社会的養護】
いよいよ今回から別科目に入ります。まずは、社会的養護からいきましょう!
諸外国のおける社会的養護の歴史
救貧事業から保護事業へ
17世紀にエリザベス救貧法により、救貧院が養育の場となりました。しかし、その目的は孤児等の救済というよりも治安維持が優先されたもので、収容所は劣悪な状態でした。19世紀末に「バーナードホーム」が設立され、孤児院を保護事業へと転換する先駆けになりました。
ノーマライゼーション
ノーマライゼーションとは、「障害があっても一般の人々と同じように生活できる社会こそ、あるべき社会の姿である」という考え方で、1953年にデンマークのバンク・ミケルセンが唱えた理論です。その後、1953年にデンマークの法律に位置づけられました。
1970年代に入ると、ノーマライゼーションの考えは、大規模施設を廃止し、施設の小規模化・地域化・社会化を進める脱施設運動に大きな影響を与えました。
ホスピタリズム
ホスピタリズムとは、「施設病」「施設症」と訳されるもので、福祉施設・病院など、長期間社会から隔絶されることによる、社会への不適応症状及び心身の障害のことを指しています。
イギリスの児童精神科医ボウルビィは「母性喪失の養育は、子どもに深刻な発達上の障害をもたらす」と述べています。
児童の権利に関する条約
「児童の権利に関する条約」は、1989年に国連総会で採択されました。この条約は、それまでの「保護される存在としての子ども」が「権利の主体者としての存在」に高められたもので、児童観を確立したものだと言えます。
日本では、1994年に世界で158番目の批准国となりました。
日本における社会的養護の歴史
明治期から戦前の社会的養護
・「東京養育院」渋沢栄一…東京の浮浪者などを収容し、初めての公立の施設になったもの。働けない大人の施設という位置付け
・「岡山孤児院」石井十次…無制限収容を唱えた児童養護施設。「満腹主義」「家族主義」などの岡山孤児院十二則がある。
・「双葉幼稚園」野口幽香、森島峰…キリスト教の思想に基づいた先駆的保育所
・「整肢療護院」高木憲次…アメリカのリハビリテーション技術を学び、療養と教育を合わせた「療育」を行なっていた。
戦後の社会的養護
戦後は、戦争孤児への対応が緊急な課題になり、社会的養護は国の責任とされました(日本国憲法及び児童福祉法)。これにより、当初は以下の9種類の施設が法定化されました。
・乳児院
・児童養護施設
・知的障害時施設
・母子生活支援施設
・児童自立支援施設
・助産施設
・児童厚生施設
・保育所
・養育施設
その後、施設の種類は社会の状況に合わせて14種類になりました。
1997年の児童福祉法改定により、それぞれの施設の目的に「自立の支援」が加えられ、2011年の改定で障害児施設の一元化により、法定化される施設は11種類になりました。
2015年の改定では、幼保連携が認定こども園が加わり、現在は12種類になっています。
児童虐待の防止
1990年代に入り、児童虐待が社会問題化してきました。
2000年には「児童虐待の防止等に関する法律」が議員立法として成立。その後3年ごとに改正されており、児童の前で配偶者に暴力を振るう行為も虐待として定められています。また、立ち入り検査や親への指導、従わない時の臨検もできるようになっています。
社会的養護の基本理念
児童養護施設運営指針では、社会的養護の基本理念として以下の2つをあげています。
①子どもの最善の利益のために
・児童福祉法第1条で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定され、児童憲章では「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、良い環境の中で育てられる。」とうたわれている。
・児童の権利に関する条約第3条では、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されている。
・社会的養護は、子どもの権利擁護を図るための仕組みであり、「子どもの最善の利益のために」をその基本理念とする。②すべての子どもを社会全体で育む
・社会的養護は、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、公的責任で社会的に保護・養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うものである。
・子どもの健やかな育成は、児童福祉法第1条及び第2条に定められているとおり、すべての国民の努めであるとともに、国及び地方公共団体の責任であり、一人一人の国民と社会の理解と支援により行うものである。
・児童の権利に関する条約第20条では、「家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。」と規定されており、児童は権利の主体として、社会的養護を受ける権利を有する。
・社会的養護は、「すべての子どもを社会全体で育む」をその基本理念とする。
保育士として子どもたちと接するためには、この社会的養護の理解が不可欠です。しっかりと基本理念を理解し、子どもたちの保育にあたりたいですね。
まとめ
歴史や法令など、保育原理と重なる内容や用語も多いので、合わせて学習を進めていけるといいと思います。また、社会的養護の基本理念については保育士試験で問われることが多いようです。しっかりと理解しておきましょう。
おつかれさまでした。
スマイル工房の髙城でした!
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