朝井リョウさん著「何者」の読書記録です。
ネタバレなしの記事なので、未読の方もご安心ください。
読了日 2022.7.23
おすすめ度 ★★★★☆(星4)
★★★★★…これはすごい!何度も読み返したい1冊
★★★★☆…おもしろい!これはよかった!もう一回読もう
★★★☆☆…うん、よかった。
★★☆☆☆…ちょっと、自分には合わなかったかな。
★☆☆☆☆…ごめんなさい。途中で挫折しました。
そして、
★★★★★★…まさに別格。この本と出会えてよかった!
こんな感じの6段階で星を付けています。
本の評価をしているわけではなく、あくまでも個人の好みとお考えください。
「何者」について
著者:朝井リョウ
出版社:新潮社
発売日:2012.11.30
【第148回直木三十五賞受賞作】
就活生の内面をリアルに描き出した作品です。
あらすじ
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。
出典:Amazonより抜粋
「何者」の感想
就活生の葛藤をリアルに描き出す群像劇と思いきや…
物語は、全編通して主人公の拓人視点で進みます。地の文、会話の間にちょこちょこ挟まれるTwitterの投稿。文章の巧さもあり、テンポよく読み進めることができます。
一見すると、青春群像劇?という印象を受けますが、読み進めていくと「あれ?これ違うな」と思わずにはいられない感じです。
就活、若者の自意識、友人関係、現実をリアルに描くことで、心にグサッとくる部分もあります。正直、「自分が就活中だったら、読みたくないな」と思ってしまいました。
「あー、スッキリ!」とはいきませんが、少し希望も見えるラストです。
直木賞受賞作ですが、読後に感じた印象は芥川賞に近いものを感じました。登場人物の内面に触れながら、読んでいる自分自身と向き合うような読書体験ができました。
純文学が好きな人にもおすすめです。
TwitterやSNSの使い方に驚いた
読んでいて一番驚いたのは、
アドレス以上の情報がこれでもかと詰まっているものなのに、俺たちは、誰かと知り合ったらまずSNSのアカウント名をおしえあう。
出典:朝井リョウ「何者」
という部分。
一昔前の「アドレス教えて」が、今は「Twitterやってる?」なのだそう。
近況を呟いたり、写真を投稿したりしたものが、常に知り合いに見られているっていうのは、なんだか聞いただけで疲れそう。つまり、僕は若者ではない証拠でしょうね笑
このあたりも、若者の「今」を鋭く切り取っているということなんでしょうね。
「何者」はこんな人におすすめ
- ・就活が終わって、就活生を客観的に見れる人
- この作品の特に後半は、就活生にとってはキツイのではないかと思います。就活がひと段落してからの方が、客観的に読めて、作品に入り込めるのではないかなと思います。
- ・直木賞受賞作を読んでみたい方
- 内容、構成、登場人物の個性、どれを取ってもおもしろいです。「おもしろい本ないかな?」と探している方には、ぜひ読んでいただきたい。
- ・純文学が好きな人
- 登場人物の内面の描き方、読後感など、純文学にも通じるものがあるように感じました。
「何者」が好きな人におすすめの小説
「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成
ミステリランキングで話題の作品です。ミステリなので、「何者」とはジャンルが全く違いますが、就活というメインテーマが同じなので。就活における覚悟については、両作品に共通しています。
「くるまの娘」宇佐見りん
こちらもまた全く違うジャンルですが。
読み終わって本を閉じた時の気持ちが「くるまの娘」に似ていました。この苦しさはまだ続くだろうけど、少しの希望も見えてるから、そこに向かって進んで欲しいという気持ち。かなり個人的な印象なので、参考程度にしてください笑
まとめ
さすが直木賞受賞作!と言える作品です。
朝井リョウさんの作品は、この「何者」が初読みでしたが、登場人物の内面を小説でここまでリアルに描けるんだなぁと驚きました。他の著作も読んでみたいと思います!
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