でっこりぼっこり
作:高畠那生
出版:絵本館
表紙のインパクトが大きな絵本。この表紙を見たときに、「巨人の話っぽいけど、でっこりぼっこりってどういうこと?」と思った人も多いのでは?
その疑問も、読み始めるとすぐに「なるほど、そういうことか」と納得。絵本のおもしろさに引き込まれていきます。
「きょだいじん」という言葉の巧みさ
「巨大な人間」を表現するときに耳慣れた言葉として、「巨人(きょじん)」があると思います。
けれど、この絵本では巨人ではなく、「きょだいじん」と呼ばれています。
読み始めた時は「きょだいじんって、言いにくいな」「なんで巨人じゃないんだろう?」なんて思っていましたが、よく考えれば「きょだいじん」だからこそおもしろい絵本になってるんだと思いました。
「巨人」というすでにある言葉には、そのイメージがついているもの。
たとえば巨人と言うと、「大きい」「怖い」「乱暴」「人間とは違う生き物」などのイメージをもつ人が多いと思います。
この絵本に出てくるのは「きょだいじん」
あくまでも「大きな人」で、みんなと同じように生きて、生活している人なんです。
だから、突然マラソンも始める。
そのマラソンのおかげで(せいで?)、でっこりしたりぼっこりしたりするんですが、きょだいじんじゃない人がそれを受け入れて、うまく生活している。きょだいじんも、きょだいじゃない人も、互いを受け入れて共存している。
ここにこの絵本のおもしろさがあるんだと思います。
シュールなおもしろさの中で、原因と結果のロジックを説明している楽しさ
きょだいじんがマラソンをすると、地面に足型がついて穴が開くんですが、その押し込まれた地面の分、地球の反対側で地面が出っ張るというロジック。
絵本の中で、原因と結果をきちんと説明している作品は少ないと思います。
しかも、なんとなく表現されているんじゃなくて、きちんと説明されている。
その説明している人(のような生き物)もまた、突然出てきて説明を始めるというシュールさ。思わず「誰?」と突っ込みたくなる状況です。
「でっこり」すると、反対側が「ぼっこり」
つまり、
原因→でっこり
結果→ぼっこり
ということが、きちんと説明されているんです。
そしてこの説明がラストの伏線にもなっているわけで、この原因と結果のロジックを理解しているからこその、ラストの衝撃的な「結果」
「そりゃ、こうなるよね」というおもしろさを味わうことができます。
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