石田夏穂さん著「我が友、スミス」の読書記録です。
ネタバレなしの記事なので、未読の方もご安心ください。
読了日 2022.8.9
おすすめ度 ★★★★☆(星4)
★★★★★…これはすごい!何度も読み返したい1冊
★★★★☆…おもしろい!これはよかった!もう一回読もう
★★★☆☆…うん、よかった。
★★☆☆☆…ちょっと、自分には合わなかったかな。
★☆☆☆☆…ごめんなさい。途中で挫折しました。
そして、
★★★★★★…まさに別格。この本と出会えてよかった!
こんな感じの6段階で星を付けています。
本の評価をしているわけではなく、あくまでも個人の好みとお考えください。
「我が友、スミス」について
【第166回芥川賞候補作】
【第45回すばる文学賞佳作】
著者・石田夏穂さんのデビュー作です。この作品のあとも、コンスタントに文芸誌に新作を掲載されています。今後も期待の作家さんです!
あらすじ
「別の生き物になりたい」。
筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。
出典:Amazonより抜粋
「我が友、スミス」の感想
淡々と語られる中のユーモア
全編とおして主人公U野の一人語りで進みます。
このU野が、とてもユニーク。
周りの人と進んでコミュニケーションをとるわけでもなく、口数が多いわけでもないので、心の中ではいろいろ考えて自分にツッコミも入れているんです。
たとえば、同じジムに通っているS子。彼女とは特にかかわりもなく、会話をしたこともないのだが、U野はS子のトレーニングウェアについて延々と述べる(心の中で)。その直後、
お前、小馬鹿にする割には随分S子に詳しいじゃねえか。正しい指摘だ。
出典:石田夏穂「我が友、スミス」
こんなことを言うんです(心の中で)!
思わずクスッとしてしまいました。
あとは、
考えてみれば、筋トレというのは不思議な行為だ。大方誰にも頼まれていないのに、重りを持ち上げたり、引っ張ったり、振り回したり、特定の非日常的な動きを繰り返すのだから。出典:石田夏穂「我が友、スミス」
と、冒頭2ページ目で作品のメインである筋トレにも突っ込んでいるんです。
こんな感じのユーモアが、いたるところに散りばめられているので、ハマる人はかなりハマると思います。
純文学に抵抗がある人も楽しめるエンタメ性
「我が友、スミス」は、第166回芥川賞候補作に選出されました。ということは、ジャンルとしては純文学に分類されます。
けれど、かなりエンタメよりの純文学なんじゃないかという印象をうけます。
筋トレというマニアックな競技が話のメインで、筋トレやボディビル大会の描写ももちろん多いです。
というか、U野の頭の中はほとんどが筋トレなので、必然的にそうなるんですよね。
ただ、その描写がかなり丁寧で、興味のない人やボディビル大会の知識のない人(かなり多くの人がそうだと思いますが)が読んでもわかりやすいです。
「筋トレをテーマにして、U野が自分自身を深く知っていく」というシンプルな構成なので、内容がスルッと入ってきます。
ぜひ純文学に抵抗がある人、純文学を読んだことがない人でも読みやすい作品です。
「我が友、スミス」はこんな人におすすめ
- ・純文学初心者
- 上でも言いましたが、これから純文学を読んでみようという人におすすめです。純文学の入門として、とっつきやすい作品です。
- ・筋トレをやったことがある(ボディビル大会に出たことがある)人
- 僕は全くこれに当てはまらないのですが、描写がかなり丁寧です。経験のある人なら、より共感しながら読めるのではないかと思います。
- ・クスッと笑えるユーモアがほしい人
- 個人的に、読んでクスッと笑える作品は貴重だと思っています。なかなか見当たりません。その点だけでも、かなりおすすめな作品です。
「我が友、スミス」が好きな人におすすめの小説
「コンビニ人間」村田沙耶香
こちらは、主人公がかなり変わった人。一般的な社会生活を営んでいる人たちから見るとマイノリティな存在という点で、「我が友、スミス」のU野と共通点があるように感じました。
少し変わった考え方をする人に会いたくなったら、これですね。
「推し、燃ゆ」宇佐見りん
個人的に純文学の中では、今のとこを一番好きな作品です。ただ、文章の好き嫌いは人によってかなり差があるように感じる作品です。「我が友、スミス」で純文学っておもしろいと思ったら、こちらもぜひ読んでもらいたい作品です!
まとめ
筋トレマシンで「スミスマシン」という物があるそうです。作品タイトルの「スミス」は、そのマシンのことですね。作中でも登場します。そして、なるほど「我が友」かと感慨深いです。
自分自身を追い込み、深いところで自分自身を見つめ直す筋トレ。
この作品を読むと、ちょっとやってみたくなりますね。
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