宇佐見りんさん著「推し、燃ゆ」の読書記録です。
ネタバレなしの記事なので、未読の方もご安心ください。
「推し、燃ゆ」について
著者:宇佐見りん
出版社:河出書房新社
発売日:2020.9.10
あらすじ
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。21歳、圧巻の第二作。
出典:Amazonより抜粋
「推し、燃ゆ」の感想
純文学のおもしろさを味わうことができる一冊
「推し、燃ゆ」はジャンルとしては純文学に分類されます。
純文学とは
大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説を総称する、日本文学における用語。
出典:Wikipedia
とされています。
実はこの「推し、燃ゆ」を読むまで、僕は純文学に対して苦手意識がありました。
純文学は、たとえばミステリーやファンタジーなどの大衆小説とは違い、物語をとおして人の内面や生き様などをどう文章で表現するかという芸術性を楽しむことができるジャンルです。
そのため、何をどう楽しんでいいのかがわかりませんでした。
「推し、燃ゆ」が芥川賞をとった時に、とても話題になりましたね。
そして本屋さんでは平積みされている。
なんとなく手にとってみると、
推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。
出典:「推し、燃ゆ」河出書房新社
この最初の一文。これを見た時に、「よし、買おう!」と即決しました。
読み始めたら、これがおもしろい。
言葉、文章のリズム、物事を切り取る視点、すべてが素晴らしいと感じました。
「ああ、純文学って、こういう楽しみ方をするんだな」ということを初めて感じることができました。
もちろん好き嫌いはあると思います。
けれど、これまで純文学に触れることがなかった方にもおすすめできる作品です。
見事に「今」を切り取っている
スマホ、SNS、地下アイドル、推し、など若者たちの「今」が詰まっています。
登場人物たちの言葉も、主語がなかったり短い言葉でしゃべったりで、最初の数ページは「読みにくい」「わかりにくい」と思いました。
けど、慣れてくると、その会話からも「今」を感じることができます。
若い人の息遣いが伝わってくるような会話。本当にすぐそばでしゃべっているんじゃないかと思うほどの自然な言葉になってきます。
今から10年後、20年後、「令和の最初はこんな時代だったなぁ」と思い出せるほどに、見事に「今」を切り取っています。
新作「くるまの娘」もおすすめです
2022.5.11に発売された「くるまの娘」もおすすめです。
「推し、燃ゆ」を読んだ後に読むと、文章に凄みが出ているのを感じます。
まとめ
純文学を読んだことのない人にもおすすめです。
人の内面を、文章でここまで表現することができるのかと衝撃を受けることを必至です。
ページ数もそれほど多くなく、1ページの文量も少なめなのでサクッと読むことができますよ。
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