保育士試験【保育の心理学(令和3年前期)】過去問解説①

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問1 アタッチメント(愛着)について

次の文はエインズワース(Ainsworth, M.D.S.)のアタッチメント(愛着)に関する記述である。A~Dの記述にあてはまる用語を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

  • 子どもが初めて訪れる部屋に親子を案内し、親と分離させたり、見知らぬ人と対面させたり、親と再会させることによって、子どもの反応を組織的に観察する実験法である。
  • 親との分離に際し、泣くなどの混乱を示すということがほとんどない。
  • 親との分離に際し、多少の泣きや混乱を示すが、親との再会時には積極的に身体接触を求め、すぐに落ちつく。
  • 親との分離に際し、非常に強い不安や混乱を示し、親との再会時には、親に強く身体接触を求めるが、その一方で親に対して強い怒りを示す。

【語群】

  • IWM(インターナル・ワーキング・モデル)
  • SSP(ストレンジ・シチュエーション法)
  • Cタイプ(アンビバレント型)
  • Aタイプ(回避型)
  • Bタイプ(安定型)
組み合わせ
C D


正解は…4

アタッチメント(愛着)について

「愛着理論」は、心理学者で精神分析医でもあるボウルビィによって確立されました。
その愛着理論に基づいて、エインズワースは「ストレンジ・シチュエーション法」を開発しました。これは、母子関係に関する実験観察法の一つです。

ストレンジ・シチュエーション法とは

方法としては、実験室内において「母子同室場面」「見知らぬ女性の入室」「母親の外出・見知らぬ女性と同室」「母親との再会」などの場面を経験させ、その様子を観察するものです。

その様子をもとに、以下のタイプに分類します。

Aタイプ(回避型) 新奇な場面や母親との再会にも無関心な回避的行動を示す不安定な愛着
Bタイプ(安定型) 母親を求めて感情的な行動をとり、母親との再会で落ち着く安定した愛着
Cタイプ(アンビバレント型) いつまでも機嫌がなおらない不安定な愛着

以上のことから、正解は4です。

問2 ごっこ遊びの事例

次の幼児と保育士の園庭におけるやりとりを記述した【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。

【事例】
2~5歳児の子どもたちが砂場でそれぞれ遊んでいた。保育士が来ると、ある子どもが皿に型抜きをした砂を盛って「ハンバーグ」と言って差し出した。すると保育士は「わぁ、おいしそー」と言って、食べる真似をしたが、それがあまりにも上手で本当に食べてしまったようにも見えた。これに対して、子どもたちは次のような反応を示した。

2歳児:保育士の様子をジーっと見つめた後、型抜きをした砂を食べられるものだと思ったのか、自分も一緒になって本当に食べようとした。

3歳児:保育士の様子を不思議そうに見つめた後、少し気持ちが混乱したかのように「おいしい?」と聞いてきた。

4歳児:「それ食べたら病気になるよ!」「早く口から出してー!」と焦った様子で保育士に伝えた。

5歳児:ちょっと驚いた様子をみせたが、冗談だと理解したのか「じゃあ、今度はこれも食べてー」と、次々、型抜きをした砂ハンバーグを持ってきて、「僕も食べるよー。なーんてね、嘘だよー」と言った。

【設問】
次のA~Dのうち、上記の事例の説明として適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

  • 子どもの反応として、大まかには「信じ込み」から「疑い」そして「笑い」へという発達変化がみられる。
  • 不可思議な出来事に対して、「疑い」の気持ちを持ちつつも、同時に「信じる」心もあわせ持っている。
  • 虚構の世界と現実の世界の境界を揺れ動きながら、世界に対するものの見方や考え方を経験していく。
  • ごっこ遊びの中で、子どもは虚構を虚構として認識することで、怖いものや不思議を楽しむようになる。
組み合わせ
C D
× ×
× ×
× × ×
× ×


正解は…1

子どものごっこ遊び

選択肢A〜Dの記述は、どれも正確に事例を読み取っていると言えます。
子どもは、ごっこ遊びをとおして周りの世界を知り、他者とかかわっていきます。

「信じ込む」→「疑う」→「虚構を認識する」→「虚構を虚構として楽しむ」という段階を経験することで、子どもの遊びは豊かなものになっていきますね。

問3 子どもの言語発達

次の文は、子どもの言語発達に関する記述である。適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

  • 子どもは、時には「ワンワン」を犬だけでなく、ねこ、うま、うし、などのあらゆる四つ足動物に使ったり、大人の男性を「パパ」といったりするように、語を大人の語の適用範囲よりも広く使う。これを語の過大般用/語彙拡張(over−extention)という。
  • 子どもは、時には自分のコップだけを「コップ」というなど、特定の文脈だけに限定された語の使用をする。これを語の過小般用/語彙縮小(over-restriction)という。
  • 子どもが早期に獲得する語彙50語の中では、人や物のような目に見える具体物を表す名詞よりも、動きを表す動詞の方が獲得しやすい。
  • 語彙爆発/語彙噴出(vocabulary spurt)とは、これまで少しずつ増えていた子どもの語彙が、ある時期に急増する現象をいう。
(組み合わせ)
×
×
×
× ×


正解は…2

過大般用と過小般用

過大般用

「ワンワン」を犬だけでなく、4つ足動物すべてに対して使ったり、「ブーブー」を自動車だけでなく、電車などの乗り物一般に使ったりすることをいいます。
自身の中でカテゴリー分けができ始めていることで、このような表現になると考えられます。つまり、認知が発達してきているということですね。

過小般用

言語の発達段階において、たとえば「コップ」=「自分が使っているコップのみ」という認識をもつことで起きる現象です。周りの大人が他のコップに対して「コップ」と言っている様子を見たり聞いたりすることで、子どもは自身の中のイメージを修正いきます。
それを繰り返すことで、「コップ」=「飲み物を飲んだり、うがいをする時に使ったりするものの総称」という認知を確立していきます。

以上のことより、AとBは○です。

子どもの言語獲得について

1歳6ヶ月頃になると、「ママ、来た」などの二語分を話し始めます。最初に出てくる言葉としては名詞が多く、その後、動詞や形容詞が増えていきます。
よって、Cは×です。

また、2歳6ヶ月頃になると、3〜4語をつなげて文章で話すようになります。
新しい言葉が急激に増えることを「語彙爆発」と呼びます。語彙が増えることで、おしゃべりが楽しくなる時期でもあります。
よって、Dは○です。

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問4 発達について

次の( A )~( D )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

ヒトにおいては、発達の過程の中で遺伝と環境の問題は、( A )が発達を規定していると捉えられている。また、近代の高度産業社会の成立とともに、世代が新たになるにつれて、様々な発達が低年齢化したり、集団や地域差が生じるという( B )が指摘された。( B )には2つの側面がみられる。一つは、発達速度や発達水準の差を異なる世代間の相違とする( C )であり、①身長・体重の伸び、②第二次性徴発現の低年齢化などがあげられる。もう一つは、発達速度や発達水準の差を同世代間の集団差、地域差とする( D )であり、①都市部の青少年は、それ以外の郡部の青少年に比較して身長が高い、②都市部の児童は、それ以外の郡部の児童よりも性成熟が低年齢化している、などがあげられる。

【語群】

  1. 環境
  2. 遺伝と環境の相互作用
  3. 発達普遍現象
  4. 発達加速現象
  5. 年間加速現象
  6. 発達勾配現象
(組み合わせ)


正解は…4

発達の考え方

発達の考え方には、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 遺伝論…生まれつき内在する遺伝的なものが自律的に発現したものとする説
  • 環境論…人間の発達は、環境の影響を強く受けながら徐々に形成されるとする説
  • 輻輳説(ふくそうせつ)…遺伝要因と環境要因がともに重要であるとする考え方
  • 相互作用説…遺伝要因と環境要因が互いに影響しあっているという考え方

現在では、発達における主要な考え方は、相互作用説であると言えます。

よって、Aに入る語は「イ 遺伝と環境の相互作用」です。

発達加速現象とは

「発達加速現象」は発達心理学で用いられる考え方で、時代が進むにつれて各年齢での平均身長・体重が増大したり、第二次性徴が低年齢化したりすることを指します。
現在、発達加速現象が起きている要因として有力なのは、都市化による、心理・社会的ストレスが増えたことだとする説です。

よって、Bに入る語は「エ 発達加速現象」です。

問5 ピアジェの発達段階説

次の文は、ピアジェ(Piaget, J.)の発生的認識論に関する記述である。( A )~( D )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

ピアジェの発生的認識論では、2~7歳の子どもは( A )にあたる。この時期は( B )と( C )とに分けて考えられている。この説によれば( B )では、子どもは2頭のゾウを見て、そこから共通性を取り出しゾウというひとまとまりである類として捉えることは難しく、「ゾウの花子」「ゾウの太郎」というようにそれぞれ個として考える。( C )では、カテゴリーを伴う思考ができるようになり、徐々に複数の知覚情報によって理解できるようになる。例えば、大きさだけで理解していたことが、大きさと重さの2つから考えられるようになり、「大きいけれど軽い」などの判断が可能になる。しかし、その一方で、この時期の子どもの判断は見かけにより左右され、また他人の視点にたって物事を捉えて行動することが難しいことなどをピアジェは( D )と名づけた。

【語群】

  • 具体的操作期
  • 前操作期
  • 感覚的思考
  • 前概念的思考
  • 直感的思考
  • 論理的思考
  • 自己中心性
  • 利己主義
(組み合わせ)


正解は…5

ピアジェの4つの発達段階説

スイスの発達心理学者ピアジェは、子どもの知的能力の発達を以下の4つの段階に分けました。

感覚運動期(0〜2歳頃)

外界に働きかけ、それを感覚を通して受容する相互作用を通じて、外の世界を認識します。
対象の永続性」の理解が進む時期であり、例えば目の前にある物体が箱の中にしまわれたとしても、その物は存在していると認識することができるようになります。赤ちゃんの頃は「いないいないばあ」で顔を隠した時に、本当にいなくなってしまったと認識しますが、徐々に、顔を隠しても「そこにいる」とわかるようになってくるのも、「対象の永続性」の理解が進んでいるということですね。

前操作期(2〜7歳頃)

この時期の特徴としては、主に以下の3つです。

  • 保存性」の未発達
  • 自己中心性
  • アニミズム的思考

ピアジェはこの前操作期をさらに2つに分けています。

  • 象徴的思考期(2〜4歳)
    もののイメージを頭の中に作り上げて保存し、そのイメージをあとで使うことができます。例えば、目の前に車がなくても車の絵を描いたりすることができます。一方で、言葉や理論は体系化されていないので、カテゴリー分けはまだ未熟な段階です。
  • 直感的思考期(4〜7歳)
    カテゴリー分けなど概念的な思考は進みますが、論理的な考え方に関してはまだ未熟な段階です。見た目で直感的に判断することが多い時期です。
    たとえばコップに入ったジュースを口径が違うコップに移し替えた場合、口径を考えず水面の高さが変わると量が増えた(減った)と思い込む様子が見られます。

具体的操作期(7〜12歳頃)

保存性の概念を獲得する時期です。
また物を動かしたり、指で数えたりなどの具体的な操作によって論理的な思考ができるようになります。
しかし、抽象的な概念を用いた推論をすることはまだできません。

形式的操作期(12歳頃〜成人)

具体的な操作や現実に縛られることなく、抽象的・形式的な思考ができるようになります。

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この記事を書いた人
さとし

二児の父。静岡在住。年間100以上の本を読みます。
趣味のDIYや読書について投稿します。
最近はダイエットにも挑戦していて、半年で10kgの減量に成功しました。

DIY、健康、読書メインの雑記ブログです。

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